神田莉緒香 KANDAFUL WORLD vol.10@Zepp DiverCityを観た

2019年3月26日。東京・お台場にあるZepp DiverCityで神田莉緒香がワンマンライブを行った。その名も「KANDAFUL WORLD vol.10」。
Goose houseにいた彼女が2012年にミニアルバム『I like it.』を出してから丸6年となったこの日、5周年のアニバーサリーイヤーの集大成として行われたライブ。
印象的だった場面を、部分部分ではあるが振り返ってみようと思う。
(※表記ユレが起きないように、基本的に人名は敬称略としました。ご了承ください)

会場内のところどころにかわいい展示が

今回、会場内に入った瞬間に目に入った展示コーナー。
過去のグッズや、ジャケット写真の撮影時に使用したオブジェ類が所狭しと飾られていた。

2018年10月に新潟・長岡で開催された「長岡米百俵フェス」の出演記念でもらった…のかな?尺玉!実物はかなり大きい。ずっしりと重そう。(さすがに触るのはNG)

他にも

懐かしのグッズ類とか

ペーパー類とか

グッズのアイデア図?完成秘話的な書類などなど、盛りだくさん。

個人的に一番テンションが上がったのはこのふたつ。

これは…!1stフルアルバム『Wonderful World』のジャケ写で被ってた帽子!

そしてこれは…

2ndフルアルバム『大きくて小さい世界』で持っていた地球儀。
ちなみに、わたしはこの作品で神田莉緒香の音楽と出会ったのだった。

会場の片隅には、フォトスポットや

(さすがに顔を入れて撮る勇気はなかった)(若さがほしい)

ファン有志の方々から贈られたかわいらしいフラワースタンドが飾られていたりもした。
(HPBD RIOKAとバルーンで描かれているとおり、この日は神田莉緒香27歳のお誕生日ライブでもあったのだった)

そんな会場を探索していたら、あっという間に開演時間に。

KANDAFUL WORLD vol.10 ライブのハイライト

わたし自身、めちゃくちゃ熱の高いファン、というわけではないので、印象的だった曲とところどころの所感をここでは綴れたらと思う。

最初の曲と最後の曲のテーマ性

いきなりここから話すと、流れをぶったぎってしまうような気もするのだが、でもここから話さないと神田莉緒香のなかでの今回のライブの位置づけが伝わらないような気もするので、やっぱりこの話からしようと思う。

今回のライブ、最初の曲が『走れハリネズミ』、そしてアンコールの最後を締めくくる曲が『ハリネズミの針路』だった。

どちらも「ハリネズミ」が出てくる曲。そして、この曲に出てくるハリネズミは、神田莉緒香本人が飼っていたペット「ハミーさん」。
ペット、というよりむしろ相棒、って感じなのかなと思って見ていたのだけど、実は『ハリネズミの針路』が出るより前に亡くなってしまったそうで。
(このあたりのことを話していたインタビューが、公式サイトの5周年記念ページの10000字インタビューにあったはずなのだけど、コンテンツが消されてしまったのか見つからなかった…)

『走れハリネズミ』では、前を向いてひたすら突き進んでいくことに対する不安と希望が入りまじった気持ちがリアルに描かれていて、

走れ宇宙にハリネズミ 針で守れぬことを恐れずに
思い通りじゃない日も確かに次の君へ繋ぐ一歩になるから
走れ宇宙にハリネズミ 針だけが心守るわけじゃない
こぼした涙キラキラほうき星 加速してゆくよ
走れ宇宙にハリネズミ 臆病だった君はもういない
小さな背中に希望を乗せてどこまでもゆけよ

と歌われている。
そんな曲がライブの最初に疾走感たっぷりで演奏された今回のライブの最後を締めくくったのが、こんな言葉。
(『ハリネズミの針路』より)

臆病な針たちは 傷つけ合いながら はじまりを思い出すよ
そしてぼくは旅に出る
閉ざした右のまぶたの裏 ピカピカ今光るのはなんだ?
かつて見てた夢の続きが きっと呼んでるんだ

同じ「ハリネズミ」が冠された楽曲だけど、ハミーさんとの出会いと別れの間でさまざまな経験をして、たくさんの現実とも直面して、そして旅に出たハミーさんとは別の道を、一緒に見ていた「夢」の続きを、これから神田莉緒香は歩んでいくのだろうな。
ライブの中でさまざまな表情を見せてくれたけれど、この最初と最後のメッセージ性がとても強くて、彼女の芯の強さを感じさせられたのだった。

セットリストの中で描かれる物語

自分で言葉を紡ぐアーティストのライブのおもしろさでもあると思うのだけど、別の時期にリリースした楽曲たちがピックアップされて並んだときにまたひとつ新たなストーリーが生まれる感じがすることがある。
今回のライブでそんな瞬間を目撃したような気がしたのが、『boyfriend?』から『TOKYO/OSAKA』、そして『めぐり』の流れ。
恋のはじまりから幸せな時間、そして「その後」の物語。そんな風に聞こえる展開だった。
『boyfriend?』はギター中村タイチとふたりでアコースティックな編成で、『TOKYO/OSAKA』ではドラムあらきゆうこ、ベース種子田健、キーボード清野雄翔(この曲のときは鍵盤ハーモニカ!)も出てきて、5人で真ん中にあるバイノーラルマイクというのかな?360°の音を拾ってくれるマイクに向かって音を出すという、普段のバンドライブの編成とちょっと変わった展開で全体の流れに緩急をつけていたりもして、そんな展開も含め楽しむことができた。

後半戦の勇ましさと力強さ

あまり女性に対して「勇ましさ」と使うのはふさわしくないのかもしれないけれど、後半戦の『Welcome to the music』からの流れは力強さとたくましさを感じる展開だった。

わたしが神田莉緒香を知ったのは、『大きくて小さい世界』をリリースした頃なので2016年。彼女はまだ20代前半だった。
そこから2年半。年月で言えば「たった」2年半とも感じられるけれど、20代半ばの女性は刻一刻と成長していく。
ラジオやツイキャスの画面越しで彼女の姿を見てはいても、年に数回足を運ぶライブのたびに、「無邪気な女子」から「大人の女性」の階段を登っていくさまに思わず驚いてしまうぐらいだった。
しっかりとした意思を持ちながらも、ふわふわと音楽業界の大海原を手探りで歩んでいた、そんな彼女が、「Zeppのステージに立つ」という目標を達成した瞬間。

「夢のようだけど夢じゃない。これは現実なんだ」

眼前に広がる夢の光景を目に焼きつけながらも、凛とした表情で歌を届けるその姿は、やっぱり「勇ましい」という言葉がぴったりだった。

ちなみに、わたしは『MOONSHOT』がとても好きな曲で、だからこそ、『星』からの『MOONSHOT』という展開はなんだかとても胸が熱くなってしまった。
曲と曲の流れで言えば、その後に『YELLOW!』、『FULL-DRIVE』が続くところもとても秀逸で。エモーショナルだった、歌も演奏も。
『炭酸ペットボトル』前にメンバー紹介兼ソロ回しのコーナーがあったのだけど、改めてバンドメンバーの豪華さも感じる。

20代のアーティストがそんな豪華なメンバーを携えると、やっぱりどうしてもバンドに引っ張ってもらっている感が出てしまうような気もするのだけど、ここのところの神田莉緒香に関しては、ちゃんと自分が真ん中に立ち、地に足をつけてバンドメンバーに「わたしはそこに行きたいの」と行く先を示している。
その勢いでこれからも自分の足で一歩一歩先に進んでいくのだろうなとも、そんな未来に思いを馳せる瞬間が何度となく訪れる展開だった。

リアルタイムに紡がれる「今日しかない言葉」

アンコール1曲目の『スポットライト』の際に、スマホの明かりを使って客席から神田莉緒香本人を照らす演出をした。
(ちなみにこの演出は、一昨年の11月1日のマイナビBLITZ赤坂で行われたライブのときもしていた)

そんな会場一丸となって空間を作り上げたこの曲で歌われているのは、こんな言葉たち。

73億分のたった1粒だけをすくいあげるなんて奇跡
あなたはそんな奇跡を起こした人なんだ
その証拠が今日という日だよ

まるで夢を達成したこの日のことを歌ったような言葉だな、と思った。

何も持ってない そう思ってたけどどうだろう?胸がいっぱいだ

もしかしたら彼女、泣いちゃうかなって一瞬思った。でも

泣けてくるよ 逃げないよ

その言葉の通り、ちゃんと客席からの明かりを見つめていた。

何も持ってないから 覚えたんだ 生み出すことを 不恰好な形でも

この曲は、彼女にとっての「音楽を届ける」意味が綴られた曲なのだろうなと聞いていても強く感じる。

ちなみに、今回のライブが行われる前に、CINRA.NETでこんなインタビュー記事が出ていた。

神田莉緒香が語る、SNS時代におけるファンとの理想的な関係作り

このインタビューの中には、「ナチュラル」「自然体」という言葉が何度となく登場する。
彼女は、自分に嘘偽りなく、そのままの姿でステージに立っている。
それを改めて感じさせられる記事であったし、そのスタイルはZeppDiverCityでも貫き通されていた。

…そんなことを感じた『スポットライト』の演奏終わりのMC、『主人公になれなくても、』を始める前に、神田莉緒香自身がこんなことを話していた。
(記憶を思い出しながら書き起こしているので、少しニュアンスなど違ったら申し訳ないと思いつつも…)

今の人生は、親がくれたプレゼント。

生まれたときに、誰にでも平等に与えられるのが「人生」。

どんなに辛いことがあっても、自分の人生をないがしろにしてしまうのは、自分を産んでくれた親にも失礼だから。

うまくいかないことに対して投げやりな気持ちになってしまうこともあった。
そんな気持ちを持っていたことに対しての「気づき」として、こんな言葉を述べていた。

そして、この曲が終わった後、『ハリネズミの針路』を歌おうとする彼女はこのような言葉を続けた。

これが夢なら、覚めたくない。
現実だとしても、終わってしまいたくない。
でも、終わらせないと、次の夢は見れないからね。
次の夢を見るために、最後の曲をやるよ。

「夢から覚めたくない」
そう思うこと自体は簡単だ。
でもその「夢」に浸り続けることは、ともすると現在いる地点から動かない、ということでもある。
つまり、現状維持、前には進めない。
夢を言霊に託し、現実のものとした彼女が一番それを自覚していた。
そして、今この瞬間を有難いものだと十分すぎるぐらいに受け止めながらも、すぐに前を向き歩いていく道を選択した。

かわいらしい恋愛ソングを歌ったりもするけれど、彼女はただの「夢見る女子」ではないのだ。
とても達観視してもいるし、自分をさらけ出すことの怖さをわかった上であえてその方向を選べるぐらいの強さも持っている。
自分の強みだけじゃなく、今の自分に足りないものもよくわかっている。
わかった上で、「次の夢」を見ようとしている。
「今の夢」に浸っている場合でないこともわかっている。

そんな思いを、彼女はどこまで「今日この言葉をこうやって言おう」と考えてステージに上がってきているのかは知り得ないのだけど、今、この瞬間、ステージに立っていて、曲を演奏するまでの数分の間に端的に言葉に発することができる彼女の能力に感服してしまうのだ。
わたし自身は、彼女より少し年上なのだけど、彼女がステージで発する言葉にこうやってはっとさせられてしまう瞬間が今までにも何度となくあった。

「素敵な人」って、どれだけの時間を生きてきたかなんて関係なくって、その時間をどう過ごしてきたかが大きく左右されるものなのだと思う。
生きてきた時間の中で、どれだけの喜びを得てきたか、どれだけの挫折をしてきたのか、どのような想いを抱えながら毎日を過ごしてきたのか。
「中身」が大事で、その「密度」が大事。
そういう意味では「表現する者」としての道を長い時間歩んできている神田莉緒香は、年上なわたしから見てもとっても魅力的な人。そして、見習うところがたくさんある人。

受け止める側がどう思うかは、人それぞれ。
ともすると、夢のZeppのステージに立っている最中なんだから、「今」をもっと噛み締めてもいいんじゃない?なんて思う人もいるのかもしれない。
言葉尻だけで捉えるとそうとも捉えられてしまうかもしれないけれど、決して「今」を噛み締めていないわけではないんだ、きっと。いや、絶対に。
今、目の前からもらったたくさんの思いやそれに対する「ありがとう」の気持ちの返し方が、彼女にとっては「これから」を示すことだったのかな、ってわたしは思っている。
そんな風に思える言葉だったんだ。

そんな風に思える言葉を、リアルタイムで紡げる。
それだけの重みがある「今しかない言葉」をその場で伝えることができる。
27歳にこの日なったばかりの人間がそれをできる、っていうことに、わたしはただただ「すごいな」と感心するばかりだった。
そして「とても素敵な人だな」と、痛感するのだった。

まとめ

思うことをただつらつらと綴っただけなので、全然レポではないなと思いつつ、彼女の夢がかなった瞬間を一緒に共有できたことが、そして彼女の「その先」を一瞬でも感じられたことがうれしい2時間半ほどのステージだった。

おめでとう、神田莉緒香。
そして、夢をかなえる瞬間と、その瞬間の達成感に満ちた表情を見せてくれて、ありがとう。夢を見させてくれて、ありがとう。
これからも、かわいらしくもあり、しっかりと芯のある女の子が描く世界を楽しみにしているよ!

最後に。時系列が冒頭に戻ってしまうけれど、ライブ会場に入る前の空のマーブル模様がちょっぴり朝焼けの用でもあり、夢の「終わり」と「はじまり」を感じさせる空だなと思えたので、置いておきます。

KANDAFUL WORLD vol.10@Zepp DiverCity セットリストまとめ

M1. 走れハリネズミ
M2. 僕と君のストーリー
M3. スターダスト
M4. トクベツ
M5. 今夜ひとり、見えない月の下で。
M6. boyfriend?
M7. TOKYO/OSAKA
M8. めぐり
M9. ここから
M10. Welcome to the music
M11. 星
M12. MOONSHOT
M13. YELLOW!
M14. FULL-DRIVE
M15. 炭酸ペットボトル
M16. 愛と叫びたいんだ

En1. スポットライト
En2. 主人公になれなくても、
En3. ハリネズミの針路

W-En. ハッピーソング